おもちゃは時代とともに様々な変化を遂げる。技術的に進化する場合もあれば、世の中の動きを反映するものもある。
最近ではおもちゃの携帯電話をうれしそうに持っているこどもをときどき見る。こどもはいつでも、おとなの真似をしたくなるものだ。
クリスマス用の玩具店の広告を眺めていて、あるおもちゃに大変驚いた。
玩具メーカー・タカラの、リカちゃん人形の関連商品「キラキラしんだんアイドルエステ」である。
おもちゃのエステの中には、タイプの違う5枚の女性の絵が壁に飾られているが、これはおそらくコース選択のためだろう。
そしてベッドと、その横に鏡台がある。また、エステティシャンと思われる「エステアイドルななみちゃん」という人形が横に掲載されている。
この人形には、マッサージ用ローラーやパックなどがセットでついてくるようである。
私がリカちゃんで遊んだ1980年代には、2階建ての家やスーパーマーケット、
病院(内科)、マクドナルドなど、我々の生活にも身近なものがリカちゃんの環境として売り出されていた。
おもちゃの化粧品は昔からあったし、母親の口紅を隠れて使うということも女の子のありがちな行為だ。
それは母親が化粧している姿を見ているからこそ憧れ、まねして遊んだのだ。今のこどもにとって、エステは身近なのだろうか。
母親が通っているのだろうか。それを見込んでおもちゃが作られたのだろうか。
商品化の経緯はわからないが、おもちゃになることによってエステという存在がこどもにとって身近になることは確かだ。
このおもちゃの名前に非常に気になる「しんだん」という言葉が入っている。
「診断」とは普通、医療において使われる言葉である。エステのおもちゃではあるものの、美容外科の要素が入っていると考えられる。
今以上に「整形」が世間に受け入れられるようになれば、美容外科のおもちゃが販売される日が来るのかもしれない。
他の商品を見てみると、「アイドルリカちゃんドリームステージ」というものもあった。
前述のおもちゃのエステにも、なぜか「アイドル」という言葉がついていた。
こども、アイドル、とくれば、「モーニング娘。」を思い出さずにはいられない。彼女らが小学生に人気があるというのはよく聞く話だ。
ブロマイドをうれしそうに見せ合う小学生を見かけたこともある。
また、ただ「モーニング娘。」のファンであるというだけではなく、自分も入りたいと思っている小学生も多いはずだ。
「モーニング娘。」はメンバーの出入りが激しいアイドルグループとしても有名であり、
次の新メンバー募集時には自分が、とリアルな憧れを抱くことができるのだろう。
きれいになりたい、かわいくなりたい、そして人気者になりたい。幼い子どもがこのような希望を持つには、やはり親の影響が大きい。
外見至上主義が広がり、人の評価が美しいかそうでないかという容姿だけに偏るのは大変危険なことである。
しかし、整形ブームの中で、美しいことが人生を豊かにするのだという考え方はさらに浸透している。
親がかわいいこどもを持つことをステータスにし始め、親同士が競い合い、こどもにも外見至上主義が根付いていく。
成長過程にある小中学生の「整形」も増えつつあるという事実も報じられている。
いくら具体的な数値を提示されても、とても現実のこととは信じられない。
しかし、もっと身近な例から考えれば、実際に茶色く髪を染めた小学生を見かけることはよくあるし、
ピアスの穴をあけているこどももいる。親に“アイプチ”で二重にされ、まぶたが荒れてしまうこどもが増えているとも聞く。
また、子供服のブランド志向も広まっている。大人と同等またはそれ以上に高額であり、家計を圧迫している。
若い女性のみならず、こどもにも美を求める傾向はすでに現実となっている。