第3章 「整形」の別の意味

(2)「整形」と心の病気

2002年秋に放送された『サイコドクター』(日本テレビ)というドラマの第8回で、 美容整形が取り上げられた。他のテレビ番組のように「整形」により美しくなることが良いか悪いとか、 キレイになりたい女の子を応援したいといった主張を含むものではない。 「整形」に潜む、もっと深い問題について描いたものだった。
タイトルからも分かるように、このドラマは精神科医の物語である。 第8回は、醜形恐怖という精神病に悩む女性をめぐるストーリーだった。 はたから見れば決して醜くない顔であるのに、本人は醜いと思い込んでしまうという病気だ。 美容外科と精神科は協力すべきである、というのがドラマの最終的な着地点であった。 美容外科は手術を行なったほうが儲かる。しかし、患者がそれで満たされるとは限らないのだ。 希望しているからといってすぐ手術をするのではなく、じっくりカウンセリングをし、 必要に応じて精神科に協力してもらおうではないか、とドラマの中の美容外科医は新たな決意を抱いた。
これはドラマを盛り上げるためだけの話ではなく、実際に問題になっている。患者が望む手術をしても、 容姿に対する悩みが解消されない。何度も手術を繰り返してしまう。 この場合、美容外科ではどうすることもできない。 美容外科を訪れる人は、精神的に病んでいる場合が多いそうである。 北里大学の塩谷信幸は自著『美容外科の真実』で精神科の講師に協力してもらったと語っている。

「これはなにも患者さんを精神病扱いするわけではない。 僕たちのもっとも知りたいことの一つに、患者の満足度がある。 とくに手術がうまく行っても満足できないタイプの患者さんがままいる。 元来が完璧主義だったり、非現実的な結果を期待している場合だが、 中には最近問題になっている醜形恐怖とか、もっと困るのはパラノイアといった病的な性格異常が紛れていることである。」 (塩谷信幸、2000、p.190)

健康という、わかりやすく共通のゴールに向かって行う医療ではなく、 患者の満足いく結果を目指さなければならない「整形」は、デリケートで難しい問題だ。 満足は心の中で生まれるものであり、メスだけで解決できるとは限らない。 だからこそ“科”という垣根を越えた、医師の柔軟な対応が必要なのだ。

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