最近はセルフプロデュースという言葉が流行っている。
芸能人が“キャラ作り”を堂々と行うようになったせいか、 一般人にもその傾向があらわれつつあるようなのだ。 学校などのほかに、“合コン”という空間で良いイメージを作り出す手段でもあるようだ。
有名人にとっては、セルフプロデュースを大いに実行できる場とはインターネットである。
第三者の手を通さずに自分からファンへ直接語りかける場所は、テレビにも新聞にも雑誌にもない。 インターネットは個人単位で簡単に情報を発信できる貴重な場だ。 自分に関する情報を自分でコントロールできるということは、自分のイメージを作っていけるということである。 ホームページは、マスコミなどの第三者に侵されることなく自分のイメージを形成できる場としても有効である。
これからホームページに重きを置く選手はどんどん増えていくだろう。
スポーツに限らず、最近では、 芸能人がホームページに載せたコメントをスポーツ紙やワイドショーが後を追って取り上げるケースが増えている。 記者会見をせずにホームページで自分の心境を語る人が増えているのだ。 そしてホームページで公開するコメントは記者会見やインタビューとは違い、手紙のようなものが多く、 ファンにとってはスターを身近に感じることができるだろう。
サッカーの中田選手は「自分の真意はマスコミ取材では伝わらない」との考えから、ホームページでコメントを公表している。 その態度に対する批判が新聞のコラムに掲載されていた。逆に、西武ライオンズの松坂選手は記者に対してどんなときでも丁寧な対応であり、大変評判が良いそうである。 そして人気者の一言や試合後の真摯な態度が、ファンを増やしその競技の門を叩く者を呼ぶのであり、 そのことがわかっていないのならプロとは呼べない、というのだ。
確かに現在のインターネット人口はテレビ保有人口に比べれば圧倒的に少ない。 そして、よほどの関心がなければわざわざホームページまで見に行くことはない。 一部の熱心なファンにしか届かない形でコメントを出すことは、プロ意識に欠ける行為と言えるだろう。 スポーツ選手はその競技だけちゃんとやっていればいいというわけではないと思う。 人に観てもらわなければ、プロスポーツは成り立たない。 サッカーを観ても上手下手や試合展開がさっぱりわからない人に対しても、入り口を作ってあげなければならない。
実際、どのようなものなのか知るために、今回は「ナカタネット」を初めて見に行った。 中田選手はホームページを開いていることがあまりにも有名だったため、 私は本人がホームページ作成について知識や技術をそれなりに持っていてほとんど自分ひとりで作っているのだとばかり思っていた。 実際に見てみると企業が開いている「スポーツナビ」というサイトの一部であり、 中田本人が文章を書いているのはほんとうにコメントの部分だけのようだった。
私は、中田といえばテレビカメラの前を黙って通りすぎる姿とカメラのCMで笑っている姿くらいしか知らなかった。 そのため、若いくせに神経質で、無愛想で、尖ったイメージだった。 しかし、ホームページに載せられたコメントは、どこにでもいるような若者が友達への手紙のように親しみを込めて書いたものに思えた。 もっと堅苦しい文章を書くのかと思っていたが、正直な自分の気持ちを綴っているようだった。 いつもこのコメントを読んでいる人たちは自分の友達が出ているような気持ちで試合を観ているのだろうなと思った。
メジャーに行く前、新庄は「阪神の新庄だから応援してくれるのなら、 もう応援してくれなくていい」というコメントをホームページに出したのは大変印象的である。 Jリーグができたとき、チーム単位でファンを獲得するという戦略があったこともかなり印象に残っている。 グッズはチームのものだけで、選手個人のグッズは作らないと言っていた。 また、すべてのチーム名に都市名を入れて地域に密着しファンを獲得する、とも聞いた。 しかし、地域のチームだからというだけで応援できるのだろうか。やはりスター性のある選手を前面に出さなければ、ファンは獲得できないと思う。
近頃は野球でもサッカーでも、人気選手は海外に行ってしまう。 球団やチームを応援するのもいいが、選手がホームページを出すことによって個人単位のファンは増えるだろう。 選手がヨーロッパに行こうがアメリカに行こうがインターネットはつながっており、身近に感じることができる。
選手ひとりひとりがホームページ作成の担当者を雇ったり、自分自身で勉強したりして、 ホームページを開設し情報を発信していく時代にきている。